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失敗からスタートした美容室経営/南 直人 「お客さま視点」が原点

お客さまが来ない、スタッフが辞める、打つ手はことごとく大ハズレ、経営は当然のごとく赤字続き……、たくさんの失敗を経験してきた「元ダメ経営者」だから、そして、どん底から立ち直ることができたからこそ伝えられる、「経営の勉強」の重要性とそのポイントを、全3回の前編「『お客さま視点』が原点」をお届けする。

従業員マインドと経営者マインド

美容の経営プラン編集部・古田領一(以下:古田)  南さんが経営する美容室・Leafは、お客さまに向けては、「白髪染めと縮毛矯正専門サロン」を打ち出しています。また、スタッフさんに向けては、「子育て中のママ美容師を応援するサロン」というスローガンの下、午後4時には営業を終え、午後5時までには全員帰宅、残業ゼロという運営体制としています。非常にユニークな経営ですが、単にユニークというだけでなく、経営面でもスタッフ1人当たり時間単価は8,000円と、超繁盛サロンでもあります。そして今は、同じ美容室に向けたコンサル活動もされていますね。
ただ、今から12年前の2008年に独立創業したときは、約5年間、赤字続きだったとも聞いています。今と昔、何が違っているのでしょうか?

南 直人(以下:南) まず、独立当時のことから話しましょう。美容師を志したときから、いずれは自分のお店を持ちたいという夢を持ってはいました。また、独立の際は、「今担当しているお客さまが独立後もそのまま来てくれたら、イケるんじゃないか?」ぐらいの皮算用もありました。この、夢と皮算用だけで独立したのが、失敗するそもそもの原因でしたね。

古田 独立の際も、特に商圏を選んだとかではなく?

南 知人のお店が閉店するというので、だったら居抜きで入ろう……というのが独立のきっかけです。独立当時から今に至るまで、動かずここで営業していますが、店舗面積は30坪あるんです。で、ここに自分1人だけではお客さまが埋まらないから、という程度の理由でスタッフを雇用していました。本当に、何の計画もなかった。

古田 特に計画を立てなくても、失敗はしないだろうと思っていたわけですね。

 「出店すればもうかるだろう」ぐらいの考えでしたね。また、これは当時の風潮でもあるのかもしれませんが、美容師として優秀なら、経営者としても優秀だという勘違いもしていました。結局、「経営者マインド」というものが全くなくて、「従業員マインド」のまま独立していました。

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古田  「従業員マインド」と「経営者マインド」とは?

 経営者とは、経営者の仕事をするから、経営者。経営者の仕事とは、美容業でいえば、人を雇用し、経営戦略を立て、リピートの仕組みをつくった上で、費用対効果も考えながら集客して顧客化する。こうしたことをきちんと考えるマインドが「経営者マインド」です。一方、「従業員マインド」は、自分と目の前のお客さまのことしか見えていない。端的に言えば「何でもいいから宣伝媒体に広告を出して集客して、技術力が高ければリピートしてくれるだろう」というものです。
実は、「何でもいいから宣伝媒体に広告を出して集客して、技術力が高ければリピートしてくれるだろう」程度でも、経営者個人のお客さまは結構リピートするんです。しかし、これがさらに悪い。経営者は「自分のお客さまはリピートしているのに、スタッフのお客さまはリピートしないのは、スタッフ個人がサボっているからだ、能力がないからだ」と勘違いを増幅させてしまうんです。

古田 その勘違いが直らないまま経営していたら、スタッフさんも定着しませんよね。

南 ええ。お客さまが全然来ないことをスタッフのせいにして当たり散らしたり、でも、辞められるのも嫌だから、変にご機嫌を取ったり。おかしなことになっていました。経営者としても最悪ですよね。自分が何をしたいのかがなかったんです。

古田 とはいえ、当時もいろいろな手を打ったのだと思います。なぜ、うまくいかなかったのでしょうか?

南 一言で表すと、「他の美容室と同じにしていたから」です。料金設定もそうだし、お店自体も、普通の美容室みたい。使っている薬剤が他と違うとはうたっていましたが、お客さまにインパクトが残るような伝え方をしていなかった。

古田 つまり、人まねしかしていなかった。

南 まねをすること自体はいいんです。でも、表面に出ていることしかまねしていないから、例えば「あのお店は3,000円では混んでいるから、こちらは2,980円にしよう」とか、わけの分からないところで迷走していました。

古田  そのような中でも、記憶に残る大失敗ってありますか?

南 ある時、運転資金のほとんどをつぎ込んで、ヘアカラー剤を高品質のものに全取っ換えしたんです。これで単価を高く取れると思って。しかも、まとめて購入すると1本当たりの単価が安くなるから、大量に。ところが、需要が全くなかった。結局不良在庫になって……。お客さまに全くリサーチをしなかったんです。今思えば、お客さまに「こんなヘアカラー剤があって、こんな仕上がりになるのですが、興味ありますか?」などと事前にリサーチしたり、少しだけ導入し、お客さまにモニターとして体感してもらったりして、感触を確かめればよかった。そういったことをせず、勝手に始めちゃったのが失敗の原因ですよね。で、自分にはお金がないから、妻のお金で買ったハイボールを飲んで酔いつぶれる。

古田 笑っちゃいけないけれど、笑うしかない状況ですね。

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本当の「経営の勉強」を始めてみると……

古田 そのような状態から、なぜ経営が好転したのでしょう??

南 あるきっかけで経営セミナーに出たことが、ポイントになりました。「きちんと経営について勉強する、こんな世界があるんだ」「経営者向けの本というのが存在しているんだ」「経営者の思考というものがあるんだ」と知ることができた。

古田 つまり、それまでは経営の勉強をするという発想がなかった。

南 そういうことです。僕、結構マニアックなので、ビジネス本を買いあさり、読みあさりました。で、そうするうちに、自分の中で「フラグ」が立ったんです。一番大きなことは、「お客さまの視点が必要だ」ということに気付いた。具体的な例を一つ挙げると、僕、それまでずっとガラケーだったのですが、お客さまがスマホを使っているなら、僕もスマホを使うべきだ、と。自分視点から、お客さま視点に変わったんです。

古田 先ほどのヘアカラー剤の件も、お客さま視点があったなら、ああはならなかったわけですものね。

南 そうなんです。

古田 南さんは、このたび『たった7日間で赤字経営から脱出する 美容室経営ドリル』を発刊されましたが、この第1章でも、「まずはお客さまの声を聞くべし」と話していますね。

南 実際、お客さま全員にアンケート用紙を配って、「Leafの何が一番のお気に入りですか?」と尋ねたら、「技術」って書いている人は一人もいなかった。自分は「技術があればお客さまは来てくれる」と思っていたのに、真逆の世界だったんです。「近いから」と書いている人は、もっと近いお店ができたら来なくなるんだな、とかね。そんな気付きだらけでした。

古田 本の中でも、お客さまの声を聞くことによるさまざまなメリットを解説していますね。

南 お客さまの声って本当に大事で、お店の本当の良さを教えてくれるというのもそうですが、例えば、美容師である自分の中に「お客さまはこんなことをされたら喜ぶかな」という発想があったとして、実はもう片方の自分は「こんなことをすると面倒だし、やりたくないな」という怠惰な発想もある。でも、お客さまの声を聞けば、「こんなことをしてくれたらうれしい」と、まず間違いなく明確に答えてくださいます。その声を頼りにすれば、怠惰な自分を振り切ることもできるんです。

(中編に続く)聞き手:美容の経営プラン編集部 古田領一

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<後編>いずれは美容業を共に歩む「仲間」になりたい

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南 直人
みなみ・なおと/1979年東京都生まれ。ハリウッド美容専門学校卒業。2008年、埼玉県さいたま市に美容室Leafを創業。赤字続きの5年間を経験する中で、経営の勉強が必要と実感し、経営論・マーケティング論・販売論などを貪欲に吸収。経営を立て直して、地域有数の繁盛サロンに転換させる。現在、その経験をもとに、美容業の傍ら、美容室経営コンサルタントとしても活躍中。5月25日、美容室経営者として必要な経営の勉強を、ドリル(演習)&対話形式で学べる著書『たった7日間で赤字経営から脱出する 美容室経営ドリル』を上梓し、注目を集めている。

■南 直人氏の著書
『たった7日間で赤字経営から脱出する 美容室経営ドリル』
※女性モード社webサイトでは、第2章まで【立ち読みする】でご覧いただけます

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